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第108話 お前が真尋の何を知っている

last update publish date: 2026-08-07 20:28:06

 翌朝、ダイニングのテーブルへ端末を置いた。

 画面には、昨夜届いた資料を開いたままにしてある。

「これは何ですか?」

 コーヒーへ手を伸ばしていた朔弥さんが、画面を見た。

「見たのか」

「私に届いた資料ですから」

「朝、俺から話すつもりだった」

「どうして、私の代わりが榊原さんなんですか」

「能力で決めた」

 能力。

 榊原さんのほうが、私より上だと言われた気がした。

「……つまり、私は榊原さんより能力が足りないと?」

「そうは言っていない」

「そう聞こえました」

「夜の緊急対応だけだ。榊原を君の代わりにするつもりはない」

「では、なぜ私へ相談しなかったんですか」

「代わりがいないと、君は無理をするだろう」

「無理と決めつけないでください」

 朔弥さんがカップから手を離した。

「君だけの身体じゃない」

「無理かどうかは自分で判断できます」

「そこが心配だと言っている。必要な準備だ」

「私を守るためなら、私の知らないところで何を決めてもいいと思っていますか。そのやり方が間違っていなかったと?」

 香澄さんのことを言っていると、朔弥さんには
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  • 子どもはまだかと責められ、夫には離婚を告げられましたので、都合のいい妻は卒業します   第135話 朔弥さんは、私を抱く腕を解かなかった

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  • 子どもはまだかと責められ、夫には離婚を告げられましたので、都合のいい妻は卒業します   第1話 子どもの名前は、もう決められていた

     ――子どもは、まだなの。  御門家の朝食卓で、その問いは天気の話みたいな顔で落ちてきた。  問いというより、確認だ。いつまで待たせるつもりなのか、と。銀のスプーンが白い皿に触れる小さな音のほうが、よほどやさしい。 「仕事が忙しいのはわかるけれど、女には期限がありますからね」  義母の冴子は穏やかに微笑んだ。  露骨に責める人より、こういう人のほうが厄介だ。やさしい声のまま、逃げ場のないところだけを刺してくる。  隣では、義祖母の千鶴が新聞を畳み、こちらも見ずに口を開いた。 「会社を支えたことは評価しているわ。でもね、真尋さん。妻の仕事は、それだけじゃないの」  喉の奥が細くな

  • 子どもはまだかと責められ、夫には離婚を告げられましたので、都合のいい妻は卒業します   第6話 悪意でなければいいらしい

     反抗には、たいてい請求書がつく。  翌朝、会社に入った瞬間、そのことがよくわかった。  昨日の夕食の席での出来事は、都合よく形を変えて社内に届いているらしい。  感情的な奥様。  離婚を受け入れられずに拗れている女。  口うるさい女役員の悪口は、みんな大好きだ。仕事の連絡より、よほど早く回る。  午前十時、海外提携案件の定例が始まった。  先方へ出す収益計画は、今日中に確定させなければならない。ここで数字を誤れば、取引は飛ぶ。  会議室に入った瞬間、嫌な予感がした。  配布済みの資料に、前夜の修正版ではなく一つ前の版が混ざっている。しかも特損の注記だけが抜けていた。 「こ

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